企業価値算定方法の1つである、類似会社比較法(マーケットアプローチ)について、考え方やメリット・デメリット、計算方法について紹介します。
M&Aで買収先の価格を決める手法の1つが類似会社比較法(マーケットアプローチ)です。会社売却野際は、市場で取引された株価や買収事例などの実績をもとに価格を算出するのですが、買収先が非上場の場合、規模や業種、収益などが似ている上場会社の株価などを参照し、金額を設定します。例を挙げると、買取先がスーパーの場合、類似会社はイオンやセブン&アイなどになります。
類似会社比較法は会社の規模や売上などが似た上場企業と比較して評価を行なうため、平等性が保つことができ、偏った評価になりません。また、他の企業と比べることで自社の弱点や強みを知ることができるのも、メリットだといえるでしょう。類似会社の実際の株価など、公開されている決算情報を参考にしているため、誰でも簡単に計算することができ、会社売却の計画を立てている段階で、それなりの予想値を立てることができます。
類似会社がない場合や、ベンチャー企業・ニッチな分野の企業など、将来の見通しが難しい企業の場合、類似会社比較法に当てはめることができないケースもあります。また、類似する会社でも各社で利益や事業規模が違っている場合は、比較が困難なこともあります。さらに売り手側が情報開示に消極的な会社だと、買い手側から「情報を出さないこと自体がリスク」だと捉えられて価格が下がる可能性もあります。評価の難易度が高い場合は、M&Aに関する知識と実績が豊富な専門家の意見を受けて慎重に対応する方がベターでしょう。
類似会社比較法で選定される企業を選ぶ際は、市場株価・利益・EBITDA・純資産などの財務指標から算出された倍率を参照します。上場企業とどれくらい類似しているかによって結果が大きく変わるため、類似会社は慎重に選ばなければなりません。詳しい計算例を以下で確認してみましょう。
(単価:100万円) | A社 | B社 | 評価対象会社 |
---|---|---|---|
時価総額 | 6,000 |
4,000 |
- |
純利益 | 500 |
400 |
200 |
帳簿上の純利益 | 3,000 |
3,000 |
800 |
倍率 | A社 | B社 | A社とB社の平均倍率 |
---|---|---|---|
時価総額÷純利益 | 12 |
10 |
11 |
時価総額÷帳簿上の純利益 | 2 |
1.3 |
1.65 |
(単価:100万円) | 株式価値(評価対象会社×A・Bの平均倍率) | A・Bの平均倍率 | 株式価値(評価対象会社×A・Bの平均倍率) |
---|---|---|---|
純利益 | 200 |
11 |
2,200 |
帳簿上の純利益 | 800 |
1.65 |
1,320 |
平均 | - |
- |
1,760 |
計算で出た評価対象会社の企業価値は17億6000万円となりました。この金額が相場ということになりますが、評価対象会社が類似会社に比べて小さい会社である場合、査定結果から1~3割ほどディスカウントされることもあります。